半月ぶりに彼と会う。楽しみかそうじゃないかと問われても、きっと私では答えを導くことはできないのだろう。いざ会ってみると、彼は1週間振りだねって言って笑った。彼は間違えている。何を間違えているのかは、分からないけれど。たわいも無い会話を繰り返していくけれど、そこには少しだけ、違和感がある。私の知らない私の話。私が覚えていないだけなのかも知れなくて、最初のうちは必死に覚えている振りをしてたけど、うん。やっぱり私、その話は知らないや。嘘がつけない彼は、嘘が付けないからと言って私を裏切らないわけじゃ無かったのにね。いつからかしていた勘違い。そもそも、彼は私を裏切っているつもりなんて無いのかもしれない。本当はもう潮時なのだろう。でも、彼を問いただしたときにもし上手く嘘をつかれてしまったら。きっと私にはそれが一番耐えられない。私の中だけでいいから、嘘のつけない彼でいて欲しい。現実も見ることの出来ない馬鹿な私のわがまま。でも、いつだって彼だけは嘘じゃないものをくれるって信じていたから。ううん、まだ盲目的に信じてしまっているから。幸せだねって笑う彼。うん、そうだね。彼が幸せだって言うなら、絶対に私は幸せなんだ。自分の中の本当の幸せから必死に目を逸らしている。彼といることが、それだけで幸せだって思い込んでいる。いっそのこと、彼のことは恋人だと思わなければいいのかもしれない。ねえ、私は。私は、あなたの...
インパクトドライバーの台本置き場
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自転車を止めてぬるくなったサイダーを飲み干したなら高梨 陽(たかなし あたる)曽根 凜翔(そね りひと)【scene1】(教室のザワザワ)曽根「高梨、はい」高梨「何?これラブレター?凜翔から?やっだお前俺のこと好きだったのかよー照れるなー」曽根「……変なこと言うなよ、後ろに名前書いてあるだろ」高梨「あ、ホントだ」高梨「ん?」曽根「どした」高梨「誰この子」曽根「俺が知るわけないだろ、上履きの色は一緒だったけど」高梨「へー、可愛かった?」曽根「あー……そうなんじゃない?」高梨「(笑う)何その含んだ言い方」曽根「可愛いか可愛くないかなんて見る人によって違うだろ」高梨「まあそれもそっか」高梨「よし、帰ろー」曽根「手紙、見なくていいの?」高梨「ここで見るのもな、まあ呼び出されたわけじゃないからそんな急がなくてもいいんじゃない?」曽根「そんなもんか」高梨「そんなもんだよ」曽根「さすが告白されなれてる男は違うな」高梨「そんなんじゃないって」高梨「てかさ、凜翔これ俺にって渡されてどんな気持ちなん?」曽根「いや別になんも思わねえけど」高梨「えー、嫉妬しないの?」曽根「……誰に嫉妬すんだよ」高梨「女の子とか」曽根「は?」高梨「やだ!俺の高梨とられちゃう!みたいな」曽根「しねーよ、そんなん」高梨「えー」曽根「つか別に、そこまで興味ねえよ」高梨「凜翔くん冷たーい!俺は凜翔くんの恋愛事情興味あるのにー」曽根...
失恋したいから、あなたを好きになりました。捨てられたいから、あなたを好きになりました。恋なんて分かりません。愛なんて分かりません。でも、失恋をしたかったのです。その痛みが分かったとき、きっと恋も愛も分かると思ったのです。好きだと思い込むことは想像以上に簡単で、そのことに勝手にがっかりしました。思い込みの感情は恋とも愛とも言えないのだと思います。けれど失恋だけは、 その涙と胸の痛みだけは本物だと。そう考えていたのです。あなたは私を嫌いになってはくれませんでした。あなたは私を捨ててはくれませんでした。だから私はあなたの隣で笑っている人を恋人だと決めつけました。勝手に好きだと思い込んで勝手に失恋したのです。どちらも勘違いだということは頭が痛くなるほどに分かっていました。だけど、涙が出ました。胸が痛くなりました。どうやら私は失恋をすることができたみたいです。けれど結局、愛も恋も何も分かりはしませんでした。皆も分からないみたいです。けれどやはり皆も、失恋だけは分かるみたいです。私の中には独占欲と仄暗い欲望と失恋が残りました。恋を失うという行為をしたけれど、失ったものは何一つありませんでした。正解など何一つなくても、きっと今の私にはこの言葉が一番間違いから遠いのだと思います。私は。私は恋を失って、初めて恋をしました。